「こっちにくれば?」
「でも…」
「いいから。」
イルカはヤマトに掴まれた腕をじっと見つめた。
「おいで…」
カカシとは違う美声にイルカの背は震えた。
カカシが飼い主であるミナトに連れられて外に行くのは週に一度の決まりごとだった。
しかしもともとここの家族ではないイルカはそんなことは知らず、今日も庭にもぐりこんでいた。
先日から顔見知りになった番犬たちに今日はカカシはいないと知らされたイルカだったが、カカシが帰ってくるのを待っていると庭で待っていた。
朝は晴れ渡っていた空が昼を過ぎたあたりからだんだんと暗く曇り始め、そして今ではぽつぽつと雨が降り始めた。
ここでは降り始めた雨が、カカシ達が行った先では土砂降りで今日は帰らないと連絡があった。
そんなこととは露知らずイルカは庭で待っていた。
秋とはいえ、今年は記録的な猛暑で今だに昼間は夏と思うくらい暑い日が続いているが、さすがに雨が降ると肌寒い。
咲き誇るコスモスの間でじっとカカシを待っているイルカもふるふると身を震わせていた。
そんな時、留守番のヤマトにイルカは声をかけられた。
カカシの隣にいつもいるヤマトはイルカに対しては無表情だ。
無表情というよりも視線が冷たい。
気がする。
だからあいさつはするものの、今まで一度もヤマトと話しをしたことはなかった。
「俺はここでカカシさんを待ってます。」
今日はイルカが飼われているうずまき家の者も皆出かけていて留守だったので、家に帰っても誰もいない。
だからカカシを一目見て帰ろうとしたのだが…
「先輩は今日は帰ってきませんよ。」
「えっ…」
「だから待っていても無駄ですよ。」
いつものように冷めた視線で言われてもイルカは萎縮するばかりである。
「だったら家に帰ります。」
ふるふると雨に濡れた身を震わせたイルカはくしゅんと小さなくしゃみをした。
するとすたんとイルカの目の前にヤマトが飛び降りてきた。
「こっちにくれば?」
「でも…」
「いいから。」
イルカはヤマトに掴まれた腕をじっと見つめた。
「おいで…」
カカシとは違う美声にイルカの背は震えた。
しゃくしゃくと音を立てながらイルカの身体をヤマトが舐めあげていく。
屋敷の一室につれてこられ、イルカはふかふかのタオルにその身を包まれていた。
しかし思った以上に身体が冷えていたらしい。
イルカの震えは止まらない。
「寒いのかい?」
ヤマトの問いに頷いたイルカはふるふると身を震わす。
ふぅと小さなため息をひとつついたヤマトは、イルカの身を包むタオルを剥いだ。
そして引っ張ってきたブランケットを自分とイルカに掛け、イルカを抱きこんだ。
そして自分の体温をイルカに分け与えるようにその身を抱きしめ、しょくしゃくしゃくと舐めている。
その与えられる体温にいつの間にかイルカはヤマトに身を任せ、うとうととしていた。
「かわいい。イルカ、好きだよ。」
そんな声が聞こえた気がした。
続く
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